ネットの悪口に、人生の時間を渡さないために――『サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル〔第4版〕』
サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル<第4版>清水陽平 (著)

最近、『サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル〔第4版〕』を読みました。著者は、インターネット上の誹謗中傷や炎上対応を数多く扱ってきた弁護士の清水陽平さんです。2022年刊行の本で、削除依頼、発信者情報開示、炎上時の対応、Googleを含む各種サイトごとの具体的な対処法まで、かなり実務的にまとめられています。
題名だけを見ると、なかなか物々しい本です。
「炎上」「開示請求」「削除依頼」。
できれば一生、縁がない方がよさそうな言葉ばかり並んでいます。
ところが読んでみると、単なる「ネットの悪口をどう消すか」という本ではありません。ネット上で何か起こったときに、まず事実関係を確認し、静観するのか、見解を出すのか、謝罪するのかを考える。さらに、必要なら削除や発信者の特定という手段もある。つまり、「反応するか、しないか」を感情だけで決めず、状況に応じて選ぶための本でもあります。
この点が、なかなか面白いところでした。
以前、大学の同級生たちと開業医ならではの苦労話をしていたとき、ネットの悪い書き込みが話題になりました。そのとき私が言ったのは、「ネットの書き込みは完全無視」ということでした。少なくとも、日々の診療まで振り回されるような相手の仕方はしない、という意味です。
もちろん、この本を読むと「何でも無視すればよい」という話でもないことが分かります。
個人情報がさらされたり、事実と異なる情報が広がったり、仕事や生活に現実の被害が出たりする場合には、削除や開示請求といった具体的な手段があります。本書はその流れをかなり丁寧に説明しています。
それでも、私が改めて感じたのは、人間には使える時間と気力に限りがあるということです。
ネットの世界では、こちらが一つ反論すると、さらに一つ返ってくることがあります。説明すれば分かってもらえるとは限りません。むしろ、説明したこと自体が次の材料になることもあります。
これはネットだけの話ではないように思います。
家族関係でも、仕事でも、病気との付き合いでも、「全部きちんと片づけよう」とすると疲れてしまいます。人間はなかなか思い通りにはいきませんし、家族であっても考え方は違います。病気もこちらの予定表を見てくれるわけではありません。
だから、ときには「これは対応する」「これはいったん置いておく」と分けることが大切なのだと思います。
医療の現場でも似ています。
検査値を一つ残らず完璧にしたり、症状を全部ゼロにしたりできれば理想ですが、現実の暮らしはそれほど単純ではありません。病気があっても食事をし、仕事をし、家族と話し、買い物に行き、ときにはテレビを見て笑います。
在宅医療では、特にそのことを感じます。
病気だけを見ていると見落としてしまうことが、その人の家に伺うとたくさん見えてきます。家族との距離、家の中の動線、食事、薬の置き場所、本人が何を大切にしているか。医療は病気だけを見るものではなく、暮らし全体の中で「どこに力を使うか」を一緒に考える仕事でもあります。
ネットの書き込みも、それと少し似ているのかもしれません。
すべてに反応する必要はない。
しかし、本当に生活を脅かすものなら、きちんと対処する方法もある。
その両方を知っていることが、いちばん気楽なのだと思います。
「気にするな」と言われても、気になるものは気になります。人間ですから当然です。ただ、気になることすべてに、自分の一日を差し出す必要まではありません。
人生には、ネットの評判より大事なものがたくさんあります。
家族と食べるご飯だったり、今日の仕事だったり、治療だったり、散歩だったり、昼寝だったりします。
全部を解決しようとせず、必要なことには手を打ち、そうでないものは少し距離を置く。
そんなふうに、ぼちぼちやっていくくらいが、暮らしにはちょうどよいのかもしれません。
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ネット上のトラブルは、突然生じて、現実世界に想像以上の影響を与えます。個人の場合には、家族や友人、学校や職場などの現在の人間関係だけでなく、進学、就職、結婚などの未来の人間関係にまで、ダメージを与えることもあります。会社の場合には、顧客や取引先との関係の悪化、売上の減少だけでなく、事業そのものが続けられなくなることもあります。
そのような大きな被害をもたらす嫌がらせの書込み・画像・動画は、どうすれば消せるでしょうか。投稿した人物は、どうすれば探し出せるでしょうか。
この本は、そのようなネットトラブルから自分や会社を守る1冊です。
前半では、10の具体例をもとに、「削除依頼」と「開示請求」という中傷への2つの対応策と、炎上が起きたときの対策や予防策を解説。
後半の第6章では、約30の有名サイトへの対応について、一般ユーザーの方や企業の法務担当者の方にも一見してわかるように、実際の画面に沿って、削除依頼などに必要な操作方法や入力する内容を丁寧に説明。実際のサイトを見ながら読むと、抱えている問題を今すぐに解決へ導きます。
第4版では、令和3年プロバイダ責任制限法の大改正に対応するとともに、炎上対応も全面改訂を施し、さらに使いやすい1冊になりました。

